MACROECONOMICS — IS-LM
曲線は描けても、
なぜ動くかで止まる。
IS-LM分析の難所は、右・左を暗記することではありません。「どの市場の均衡か」「何が外から変わったか」「新しい均衡までどの曲線上を動くか」を分けることです。
WHERE STUDENTS GET STUCK
同じグラフに、4種類の判断が重なっている。
矢印だけを覚えると、問題文の条件が少し変わっただけで判断できなくなります。まず次の4点を別々に確認します。
市場
ISは財市場、LMは貨幣市場。それぞれを均衡させる組合せです。
軸
横軸は産出量Y、縦軸は利子率r。軸の変数はモデル内部で同時に決まります。
外生変数
政府支出G、租税T、名目貨幣供給M、物価Pなどは曲線の位置を変えます。
調整経路
一方の曲線が動いた後、もう一方の曲線上を移動して新しい交点へ向かいます。
QUICK DIAGNOSIS
3問で、暗記になっていないか確認する。
利子率rだけが低下した
他の条件が一定なら、IS曲線はシフトする? それとも曲線上を動く?
答えと診断
IS曲線上の移動です。rは縦軸の変数であり、曲線を作る外生条件そのものは変わっていません。
政府支出Gが増えた
同じ利子率の下で財市場の均衡産出量はどう変わる?
答えと診断
総需要が増えるため均衡産出量は増え、IS曲線が右へシフトします。
名目貨幣供給Mが増えた
物価Pが一定なら、LM曲線はどちらへ動く?
答えと診断
実質貨幣供給M/Pが増えるのでLM曲線は右、または下へシフトします。同じYなら均衡利子率が低くなるからです。
READ THE TWO MARKETS
ISとLMは「2本の線」ではなく、2つの均衡条件。
利子率が下がると投資Iが増え、需要と均衡産出量Yが増えるため、標準的には右下がりです。
所得Yが増えると取引のための貨幣需要が増えます。供給一定なら、均衡には高いrが必要なので右上がりです。
WORKED EXAMPLE
連立方程式なら、政策前後を検算できる。
単純化したIS式とLM式を次のように置きます。rはパーセント単位です。
1000 − 20r = 500 + 30r より、500 = 50r。
r = 10。どちらかの式へ戻します。
Y = 1000 − 20×10 = 800。LM式でも500 + 30×10 = 800です。
グラフで方向を判断し、連立方程式で大きさを確認します。どちらか一方だけでは、符号の取り違えや代入ミスを見落としやすくなります。
SHIFT OR MOVEMENT
「軸の変数か、曲線の外の条件か」で決める。
| 変化 | 最初に起こること | 曲線 | 新しい均衡まで |
|---|---|---|---|
| 政府支出G↑ | 同じrで総需要・Yが増える | ISが右へシフト | LM曲線上を右上へ移動 |
| 租税T↑ | 可処分所得と消費が減る | ISが左へシフト | LM曲線上を左下へ移動 |
| 貨幣供給M↑ | 同じYで均衡rが下がる | LMが右・下へシフト | IS曲線上を右下へ移動 |
| 物価P↑ | 実質貨幣供給M/Pが減る | LMが左・上へシフト | IS曲線上を左上へ移動 |
暗記だけの説明政府支出が増えるとISは右、だからYが増える。
因果が伝わる説明Gの増加で同じrの総需要が増えISが右へ動く。Y増加で貨幣需要が増えるため、LM上を右上へ移動してrも上がる。
POLICY WITH NUMBERS
財政政策では、利子率上昇が需要増加の一部を打ち消す。
政府支出の増加によってIS式が Y = 1100 − 20r へ変わったとします。LM式は変わりません。
最初の同時均衡。
需要増加は100。
r上昇で投資が減り、増加は60に縮む。
この差がクラウディング・アウトです。「財政政策は無効」という意味ではなく、この例では利子率上昇が産出量の増加を一部弱めています。
COMMON ERRORS
試験では、矢印より説明の途中が採点される。
rが下がるからISが右へシフト
rは軸の変数です。他条件一定ならIS曲線上を右下へ動きます。
貨幣供給が増えるとISが動く
最初に変わるのは貨幣市場です。LMが右・下へ動きます。
右シフトならrも必ず上がる
どの曲線が動くかでrの方向は違います。IS右ならr↑、LM右ならr↓が標準です。
モデルの前提を書かない
短期・物価固定・投資が利子率に反応する等、授業で置かれた前提を確認します。
EXAM CHECKLIST
政策問題は、この順番なら崩れにくい。
- 変化したのはG・T・M・Pなどのどの条件か
- 最初に財市場と貨幣市場のどちらが変わるか
- ISまたはLMはどちらへシフトするか
- もう一方の曲線上をどちらへ移動するか
- Yとrの最終方向を、式または言葉で検算したか
- 短期・物価固定など問題の前提を書いたか
WHEN YOUR CLASS USES DIFFERENT NOTATION
消費関数・投資関数の形が違っても、判断軸は同じです。
授業によって、租税、期待、物価調整、海外部門まで含む式は異なります。実際の講義資料と試験範囲を確認し、どの式からIS・LMを導く授業なのかに合わせて整理します。
マクロ経済学の資料を相談するSOURCES
内容確認に使用した一次資料
- 獨協大学 2026年度シラバス:マクロ経済学 — AD-AS、IS-LM、政策効果の授業上の位置づけ。
- MIT OpenCourseWare: Principles of Macroeconomics — 短期マクロモデルと政策分析の公式教材。