ECONOMIC MATHEMATICS — MATRIX
計算手順は追えても、
何をまとめた式かわからない。
行列は数字を四角く並べる技術ではありません。複数の方程式を一つの写像として読み、「解が一つに決まる条件」まで確認すると、逆行列の公式が経済学の道具になります。
FOUR LAYERS
行列問題は、4つの役割を分ける。
未知数ベクトル
xとyなど、同時に求めたい量を縦に並べます。
係数行列
各式で未知数が何倍されるかを、式の順番どおりに並べます。
定数ベクトル
各方程式の右辺を同じ順番で縦に並べます。
可逆性
式が独立で、未知数が一意に定まるかを行列式で確認します。
QUICK DIAGNOSIS
3問で、記号と意味がつながっているか確認する。
積Axの1行目
Aの1行目が(2,1)、xが(x,y)なら、何を表す?
答えと診断
2x+yです。「Aの行」と「xの列」の内積が、対応する方程式の左辺になります。
det A = 0
このとき、逆行列の公式を使ってよい?
答えと診断
使えません。1/det Aが定義できず、連立方程式の解も一つには決まりません。
Aの逆行列を掛ける位置
Ax=bから、右側にAの逆行列を掛けてもよい?
答えと診断
一般にはいけません。行列の積は順序を交換できないため、両辺の左から掛けてA−1Ax=A−1bとします。
FROM EQUATIONS TO A MATRIX
2本の式を、Ax = bという一文にする。
行列の大きさは Aが2×2、未知数ベクトルが2×1なので、積Axは2×1です。計算前に「内側の次元が一致するか」を確認します。
WORKED EXAMPLE
行列式で確認してから、逆行列を使う。
det A = 2×3 − 1×1 = 5。0ではないので逆行列が存在します。
A−1 = (1/5) [[3,−1],[−1,2]]。対角を入れ替え、非対角の符号を変えます。
x = A−1b = (1/5)(15,10)T = (3,2)T。
2×3+2=8、3+3×2=9。両方の式を満たします。
WHAT THE DETERMINANT TELLS YOU
det A = 0は、単なる計算禁止ではない。
det A ≠ 02本の直線が1点で交わる。式は独立で、解は一意に決まる。
det A = 0直線が平行、または一致する。解がないか、無数にあり、一意には決まらない。
たとえば x+y=3 と 2x+2y=6 は同じ条件を2回書いています。係数行列の2行目が1行目の2倍なので det A=0となり、x+y=3上のすべての点が解です。
WHY ECONOMICS USES MATRICES
変数が増えても、構造を同じ形で扱える。
各産業の中間投入係数Aと最終需要dから、必要な総生産xをまとめて求めます。
複数の説明変数と観測を行列Xにまとめ、回帰係数を同時に求めます。
公式を丸暗記する前に、行が何を表し、列が何を表すかを言葉にします。転置や次元のミスを大きく減らせます。
COMMON ERRORS
答えが出ても、行列として成立していないことがある。
係数の順番を変える
各行でx,yの順を統一し、右辺も方程式の順にそろえます。
det Aを確認しない
逆行列の前に0でないかを確認し、解の存在と一意性を判断します。
掛け算の順序を交換する
一般にAB≠BAです。逆行列はAを打ち消せる側から掛けます。
逆行列を求めて終える
元の2本の式へ代入し、両方を満たすかまで検算します。
EXAM CHECKLIST
連立方程式は、この順番で崩さない。
- 未知数と方程式の順番を固定する
- 行列の大きさと積の次元を確認する
- det Aを計算し、逆行列の存在を確認する
- 両辺の左からA−1を掛ける
- 行列積を行×列で計算する
- 元の全方程式へ代入して検算する
WHEN MATRICES APPEAR INSIDE ECONOMICS
線形代数だけでなく、使われる経済モデルから戻って説明します。
産業連関、最小二乗法、連立均衡モデルでは、同じ行列でも行と列の意味が違います。講義資料の記号に合わせ、次元、転置、逆行列が何をしているかを一つずつ整理します。
行列を使う授業資料を相談するSOURCES
内容確認に使用した一次資料
- 獨協大学 2026年度シラバス:経済数学・統計関連科目 — 行列、逆行列と回帰分析の学習上の接続。
- MIT OpenCourseWare: Linear Algebra — 連立方程式、行列、逆行列の公式教材。