ECONOMIC MATHEMATICS — MATRIX

計算手順は追えても、
何をまとめた式かわからない。

行列は数字を四角く並べる技術ではありません。複数の方程式を一つの写像として読み、「解が一つに決まる条件」まで確認すると、逆行列の公式が経済学の道具になります。

対象:大学の経済数学・線形代数読了目安:10分更新:2026年8月14日

行列問題は、4つの役割を分ける。

01

未知数ベクトル

xとyなど、同時に求めたい量を縦に並べます。

02

係数行列

各式で未知数が何倍されるかを、式の順番どおりに並べます。

03

定数ベクトル

各方程式の右辺を同じ順番で縦に並べます。

04

可逆性

式が独立で、未知数が一意に定まるかを行列式で確認します。

3問で、記号と意味がつながっているか確認する。

Q1

積Axの1行目

Aの1行目が(2,1)、xが(x,y)なら、何を表す?

答えと診断

2x+yです。「Aの行」と「xの列」の内積が、対応する方程式の左辺になります。

Q2

det A = 0

このとき、逆行列の公式を使ってよい?

答えと診断

使えません。1/det Aが定義できず、連立方程式の解も一つには決まりません。

Q3

Aの逆行列を掛ける位置

Ax=bから、右側にAの逆行列を掛けてもよい?

答えと診断

一般にはいけません。行列の積は順序を交換できないため、両辺の左から掛けてA−1Ax=A−1bとします。

2本の式を、Ax = bという一文にする。

2x + y = 8x + 3y = 9

行列の大きさは Aが2×2、未知数ベクトルが2×1なので、積Axは2×1です。計算前に「内側の次元が一致するか」を確認します。

行列式で確認してから、逆行列を使う。

1
行列式を求める

det A = 2×3 − 1×1 = 5。0ではないので逆行列が存在します。

2
逆行列を作る

A−1 = (1/5) [[3,−1],[−1,2]]。対角を入れ替え、非対角の符号を変えます。

3
bに左から掛ける

x = A−1b = (1/5)(15,10)T = (3,2)T。

4
元の式へ戻して検算

2×3+2=8、3+3×2=9。両方の式を満たします。

A−1 = 1/5 × [[3, −1], [−1, 2]](x, y) = (3, 2)

det A = 0は、単なる計算禁止ではない。

det A ≠ 02本の直線が1点で交わる。式は独立で、解は一意に決まる。

det A = 0直線が平行、または一致する。解がないか、無数にあり、一意には決まらない。

たとえば x+y=3 と 2x+2y=6 は同じ条件を2回書いています。係数行列の2行目が1行目の2倍なので det A=0となり、x+y=3上のすべての点が解です。

変数が増えても、構造を同じ形で扱える。

産業連関分析(I − A)x = d

各産業の中間投入係数Aと最終需要dから、必要な総生産xをまとめて求めます。

最小二乗法β̂ = (XTX)−1XTy

複数の説明変数と観測を行列Xにまとめ、回帰係数を同時に求めます。

公式を丸暗記する前に、行が何を表し、列が何を表すかを言葉にします。転置や次元のミスを大きく減らせます。

答えが出ても、行列として成立していないことがある。

誤り 1

係数の順番を変える

各行でx,yの順を統一し、右辺も方程式の順にそろえます。

誤り 2

det Aを確認しない

逆行列の前に0でないかを確認し、解の存在と一意性を判断します。

誤り 3

掛け算の順序を交換する

一般にAB≠BAです。逆行列はAを打ち消せる側から掛けます。

誤り 4

逆行列を求めて終える

元の2本の式へ代入し、両方を満たすかまで検算します。

連立方程式は、この順番で崩さない。

  1. 未知数と方程式の順番を固定する
  2. 行列の大きさと積の次元を確認する
  3. det Aを計算し、逆行列の存在を確認する
  4. 両辺の左からA−1を掛ける
  5. 行列積を行×列で計算する
  6. 元の全方程式へ代入して検算する

線形代数だけでなく、使われる経済モデルから戻って説明します。

産業連関、最小二乗法、連立均衡モデルでは、同じ行列でも行と列の意味が違います。講義資料の記号に合わせ、次元、転置、逆行列が何をしているかを一つずつ整理します。

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